相手の立場に立って考える能力

養老 孟司(七十七ビジネス財団 講演録) – 2018.7.23

おさえる

  • 3歳児は自らの立場・視点からしか物事を見ることしかできない
  • 5歳児くらいになると初めて立場の交換ということができるようになる

要点

はじめに

 3歳頃までは、どんな能力においても人間はチンパンジーに劣る。しかし、5歳くらいまでの間に、人間の能力は急激に伸び、チンパンジーを凌駕する。その変化は何かを探るため、人間の3歳児と5歳児を対象に認知科学者が調べた実験。

準備

3歳児と5歳児の母集団をつくり、部屋に大きな箱を2つ置く

お姉さんがやってきて、Aの箱に人形を入れ、部屋を出ていく

3歳児も5歳児も、お姉さんがAの箱に人形を入れるのを見ている

人形はAの箱

中年の女性がやってきて、Aの箱の人形をBの箱にいれ、部屋を出ていく

3歳児も5歳児も、中年の女性がAの箱から人形を取り出し、Bの箱に入れるのを見ている

人形はBの箱

お姉さんがやってくる

準備はここまで

実験:人形がAの箱に入っているというお姉さんの信念を理解できるか?

3歳児・5歳児それぞれに、「お姉さんはどちらの箱を開けるか?」を尋ねる

3歳児の答えは「Bの箱」

 自己中心的で、自らの立場・視点からしか物事を見ることができない。人形はBの箱に入っているので、当然に知っていなくてはならないという、実力主義、剛腕主義の世界。

5歳児の答えは「Aの箱」

お姉さんは人形がBの箱に入れられたのを知らないので、Aの箱を開けるという、お姉さんの立場に立って推測をする。5歳児くらいになると初めて立場の交換ということができるようになる。