垣内 勇威 – 2020/9/10
おさえる
要点
はじめに
- デジマには必ず知っておかなければならない「定石」が存在する
- 本書の「定石」は大幅なコスト削減を実現する施策パターン
- 本当に成果の出る施策は、企業規模や業種による差がほとんどない
- 本書により100点満点中80点までは誰でも到達可能(残りはトレンド・才能など)
Introduction:デジマには定石がある
- デジタルに「できること」「できないこと」を理解する(多くの人が理解していない)
- デジタルの限界① 人間のようなおもてなしはできない
- デジタルの限界② ユーザが目の前にいない
- デジタル上では、見込み客の「質」を問わず、「量」を増やす方針がつねに正解
「質」はあとからいくらでも企業で選別できる - 車輪の再発明に注意
- デジタル活用の専門家が生まれない理由①ジョブローテーション②人材の流動化(転職)
- デジタル初心者は「バズワードの流行」に翻弄
Part1:デジタルの特性を理解する
Chapter1 デジタルの限界を理解する
- デジタルでは万能ではない(理解が浅い人ほど、幻想をいだく)
- デジタルは既存ビジネスの機能を代替する「手段」のひとつ
- 既存ビジネスを理解し、デジタル特性で置換できる箇所を見つけ出すアプローチ以外に選択肢はない
- デジタル4つの限界
❶3秒以上の営業トークは無視される
・ユーザは好きなものしか見ない(顧客は目的まっしぐら)
・ユーザに気づきを与えることは極めて困難
・できることは、唯一ユーザの期待に応えるだけ(3秒以下なら聞く耳を持つ)
・見込み客の質は高められない(その後の営業で選ぶ)
・企業にカスタマージャーには操作できない
・デジタルでブランディングも困難(顧客はサイトデザインが理由で購買を決めない)
❷ユーザーの顔が全く見えない
・データで「行動履歴」は見えても「理由」はわからない
・ユーザを知るには少なくとも1年に一回のヒアリングは必要
(訪問動機・行動順序・心理変化・購買動機のパターンを言えるように)
・ユーザを理解すると無価値な仕事(デザインへのこだわりすぎ等)が判別できる
・つねに「デジタルのユーザを知らない」という前提に立つべき
・最も有効なユーザ理解は今もなお「アンケート」、次に「行動観察」
❸爆発力がなく、少しずつしか伸びない
・デジタルの集客で一定以上の母数を集められる媒体は次の5つで爆発力はない
「検索」「広告」「SNS」「メール」「アプリ」
・デジタルのみで月間10万までは集客可能、100万以上はマス広告・コンテンツ力
・ます広告自体も弱体化し、ファネルの概念自体も変化
❹大量データを集めただけでは何も変わらない
・AIに夢をみる人がいるが、企業が個別に利用するのは圧倒的にデータ量が少ない
・また、AIの導き出す答えの理由を人間は説明できない
・データ活用のカギは「ユーザ行動の仮説」にあり(集める前に、何に使うかを考える)
Chapter2 デジタル活用の目的はコストカットである
- デジタルの強みは既存のマーケ手段を大幅にコストカットできること
強み①:無料で無限に情報発信できる
強み②:ストックになり半永久的に集客できる
強み③:大量のリアルタイムデータが無料で集まる(アンケートも!)
Chapter3 なぜ、デジタルは無駄な仕事が増えやすいのか?
- デジタルがコストを浪費する最大の原因は、デジタルという手段だけに囚われた「局所最適化」の横行
- 次に「重箱を突く細かい仕事」と「ユーザ不在で自己満足を追求する仕事」
- 「重箱化」する特質は①顧客接点がおおくやめられない②全世界に常時公開している③データが集まりすぎる
例)ABテストの仕事した感、SEOに一喜一憂、言い訳のアトリビューション - 「自己満足」は百害あって一利なし
例)サイトリニューアルの変わった感、デザイン統一、ポエム、データから宝物探し
Part2 デジタルの定石を理解する
Chapter4 あなたは顧客に毎年あっているか?
- 「顧客重視」ではなく、何よりも一番に優先して顧客を主語に考える企業姿勢である「顧客主導」の必要性が高い
- マーケターの9割が顧客が買うまでの流れを説明できない
例)顧客はECサイトを何のために使っているのか?→実店舗を訪れる顧客がカタログ利用 - 1000万するBtoB商品(ERP等)でも担当者はサイトを細かく見ない
ユーザは離脱するか問い合わせするかを決める→導入事例数を増やすのが重要 - 顧客が買うまでの流れを把握するには、1回のアンケートと5名の行動観察でほぼわかる
①調査対象者を決める
②アンケートを実施する(認知・初回購入の検討・初回購入の実行・継続検討・継続実行)
③行動観察調査を実施する(ヤコブ・ニールセン:5名で80%の課題を抽出) - データ分析から「顧客が買うまでの流れ」を導出するのは極めて困難
仮説を補強するためにデータを活用する - 顧客が買うまでの流れは3つに分ける
①日常生活フェーズ:潜在顧客リスト獲得と継続接触
②初回購入フェーズ:健在そうのゴール直行
③継続購入フェーズ:コンテンツとルーティン作り
Chapter5 日常生活フェーズの定石
- ニーズがない人に買いたいと思わせるのは難しい
①天才的に画期的な商品や面白いコンテンツ(例:ファブリーズ):デジタル無駄
②安価な万人向け新商品をマス広告で宣伝:デジタル苦手
③人間によるコンサルティング提案:デジタル代替不可能 - デジタル活用は、偶然ニーズが顕在化したときに「純粋想起を獲得」し、最速で「ニーズを検知」すること
- ターゲットユーザに連呼するだけなら、デジタルでも十分TVCMの代替が可能
デジタルを使うならターゲットユーザだけに連呼する方法を考える - 定期訪問は顧客のニーズの検知に役立っているが、デジタルでも代替できる
Chapter6 初回購入フェーズの定石
- 定石は「すべての顧客接点から最速でゴールを狙う」こと
初回購入フェーズでは、「目的の情報」以外見てくれない - 「ゴール直行」の仕掛けを作る
Webページは単体で成立していることが必要、情報構造化のピラミット型は典型的失敗例 - LPの「縦の長さ」と「ゴール到達率」に相関はなく、勝負はファーストビュー
- 障壁の高い順
①有料契約(定期):定期購入
②有料契約(単品):単品購入
③無料依頼(オープンクエスチョン):お問い合わせ
④無料依頼(サービス関連):資料請求、見積もり、トライアルなど
⑤無料依頼(サービス関連しない):ノウハウ資料請求など - 検索の3つの段階
選び方の勉強:顧客数多・獲得率低
候補洗い出し:顧客数中・獲得率中 → 最も競争が激しい
候補絞り込み:顧客数少・獲得率高
Chapter7 継続購入フェーズの定石
- 売り切り型から継続購入型が今後のビジネスの主流
スクラッチからSaaSなど、ほぼすべてのビジネスが「継続購入型」に移行する - 人的労働力をデジタルに置換・顧客主導が求められる
- どのビジネスでも「定期課金」を狙うべき:LTV = 購入者数 x 購入単価 x 購入期間
LTVに最も影響を及ぼすのは「購入期間」 - 「買う」行動を減らしてLTVを最大化するのが「定期購入」「サブスク」
- 次の手段は「定期都度課金」で、このルーティンを作り出す施策が有効
- 「定期的に買う商品」+「ついで買い」を誘発(ついで買いの方がはるかに楽)
- 購入後も情報発信し続ける
- 最重要KPIの「購入期間」を伸ばすには、どれだけユーザの生活時間を多く占有できるか
顧客との接触頻度をあげるほうが購入期間は伸びる - 接触頻度は「磨き抜かれたコンテンツ(商品・記事・特集・提案など)の量産」「シンプルなルーティング動線の設計(多機能NG)」「利用開始直後のサポート」
Part3 定石を使って実践する
Chapter8 定石をさまざまなビジネスモデルに適用する
- DXアクセラレータ
①3つのフェーズ(日常生活フェーズ・初回購入フェーズ・継続購入フェーズ)
②GOAL -> USER -> ACTION
A1:優先度高で時間も費用もほとんどかからない
A2:時間か費用が一定以上かかる
A3:伸びない・伸びても微々たるもの(捨てるべき仕事) - マーケティングにおけるデジタル活用の型は18種類
①Web完結型:商品勝負
・ECサイト
・EC以外
②Web to 営業担当型:Webのゴールを何にするかが重要な論点
・BtoB
・BtoC(販売・来店頻度)
Chapter11 [Web完結型]ECの型
- 一般的なECから①実店舗への総客を促すEC②単品で定期購入を促すECへ
- 一般的ECが生き残るには、徹底的にニッチを追求・ファンの獲得しかない
プレミアムバンダイ - SEO、広告、UIも重要だが、もっとも重要なのは「商品」
- 日常生活フェーズ:認知だけを狙わず、初回購入を促進する(初回購入と同一)
利益率に余裕がなく、販促に使えるコストが格段に低い - 初回購入フェーズ:一見さんに売れる商品を作ってゴール直行
・最も重要なアクションは「一見さんに売れる商品」を作ること
ヒント:欲しいものがあったときどうするか?->近くの店舗、アマゾン、楽天へ
チャンスは「探したけど見つからない」「探していないとき」を狙う
Step1. 「①新規顧客に売れているもの②競合で売れているもの」を拡充し、その次に自社ならではの付加価値ある商品を開発
Step2. ひとり新規購入してもらうために、どこまでコストをかけるか(目標CPA)を設定(新規と継続で追うべき指標は分けるべき:新規はハードルが高い・新規ROASは避ける)
Step3. 売れる商品と目標・CPAが決まったら、あとは集客をかけるだけ
・ECはトップページ・商品一覧・商品詳細の3つ、一覧と詳細への集客が主で、サイト構造やGoogleガイドラインも重要だが、ユーザニーズを満たす方がはるかの重要
・楽天やYahoo!などは新規顧客の獲得と在庫処分に使う
・販売する商品は「理性型(価格・スペック)」か「感性型(写真から主観的に判断)」で最適なUIは異なる
・初回購入で重要なのは「会員登録」、ゲスト購入は愚策中の愚策 - 継続購入フェーズ:LTVを高める商品作り、継続接触
・最も重要なアクションは「LTVを最大化する商品」を作ること
・次は定期的に購入してもらえる商品の検討
・最後がアップセル用商品
・リピーターは新規と異なり、トップページを起点に行動(ルーティンがヒント)
Chapter12 [Web完結型]その他の型
ブランドサイト
- ブランドサイトの多くは明確なゴールを定義されずに運営されている
- 日常生活フェーズ:TVCMの代替がゴール
- 初回購入フェーズ:商品を選ぶ上で、最も便利なサイトをつくる(初回購入の後押し)
どこよりも便利でわかりやすい説明、副次的に販売員の代替
効果を得るにはアンケートが不可欠、施策の効果最大化にはユーザ理解が不可欠 - 継続購入フェーズ:コンテンツを増やしてコスト削減&継続接触
- ブランドサイトの価値を乱暴にいうならコンテンツ量に比例する訪問数が重要
記事メディア
- マネタイズ方針は「読者の課金」(参入障壁高い)と「スポンサーの広告」
- やり方としては、記事でファンを魅了し続けるしか方法はない
- メディアの価値は優良顧客の価値で決まる
- 初回購入フェーズ(日常含む):一見さん向け記事を開発し、顧客リスト獲得
- 継続購入フェーズ:LTVを高める記事開発と継続接触&回遊強化
おわりに
- デジマの世界では、成果につながらない仕事の山が築かれている
顧客が買うまでの流れを把握するには、1回のアンケートと5名の行動観察でほぼわかる
LTVに最も影響を及ぼすのは「購入期間」