佐藤 優(新潮新書) – 2016/4/15
おさえる
- 上司に従いたくない場合は異動・退職以外方法はない(異動の場合は上司は敵になる)
- 「能力はないが、やる気のある部下」は最も厄介、根拠のない自信や無駄なやる気により、引き起こしたトラブルを始末するのは実に面倒
- 最も危険なのは「嘘をつく人間」
要点
はじめに
- 最近は「ブラック企業」という言葉が独り歩き、むしろ新入社員を「お客さん」扱いしているような企業は教育を放棄
- いかなる組織にも「物理の法則」があり、評価はこれをどのくらいわかっているか
- 組織は基本的に上の味方
第1章:組織の活用術:組織は自分を引き上げてくれる
- 組織には個人を強制的に鍛え、スキルを身につけさせる仕組みがある
- 重要なのは「誰に向けて仕事をしているか」という視点(相手に合わせた立ち振る舞い)
- 組織は人を引き上げてくれる(どの組織でも10年くらいで一生懸命仕事をすると一人前)
第2章:組織の従属術:上司には決して逆らうな
- 上司には絶対に逆らってはいけない。組織は上司に味方する
- 上司のいうことがおかしい時は、3回まで理由を変えて反対意見を言って良い
- 上司の命令がコンプライアンス違反や違法行為である場合は話は別
人事に「会社に迷惑をかける可能性がある」と相談 - 従いたくない場合は異動・退職以外方法はない(異動の場合は上司は敵になる)
- 組織では「うまくやれ」「なんとかしろ」という無理難題が、常に下りてくる
上司には逆らえないが、下の人間が取れる対抗策のひとつが「サボる」 - なんでも(従順に)聞いていると、もっと(ヤバい)仕事を押し付けてくる
対抗策は、個人の信条等により、上司に仕事を振らないほうがいいと判断してもらう - より高いところにいる人間に訴えるやり方もあるが、リスクあり
- 人間の迫力は普段との落差
- 「自分は能力があるのに組織がそれを評価しない」lという不平をいう奴には注意
客観的に見て、事実能力がない - 評価を上げたければ、力を持つ外部の人から働きかけてもらう
- オーナー企業のトップが無能なら1日も早く逃げるべき、会社が倒産・失業リスクあり
能力は低いのにやる気だけある人間が最悪のパターンで、間違えた指示や命令をたくさん行う、そしてそれらほとんどが思い付きなので朝令暮改となる - 出世は巡り合わせと運に左右される
第3章:組織の分析術:人材には適した場所がある
- いずれの組織でも存在する目的があり、そこに所属する人間は似ている
同じようなしくみで働き、同じような問題を抱えている - ロッソの諜報活動の行あいでの職業的な適正診断
第1:利己的なサメ:利己的・無節操・卑劣・優位に立つためならなんでもする
第2:バネが伸びきっていないタフガイ:地頭良い、好奇心高い、真のエリート
第3:慣習に従う一般層:普通・大多数がここ
第4:無害な弱虫:諜報活動には向かない
第5:高潔すぎる正義感:独自の正義感を持つものが一番危険・マスコミへの内部告発
第4章:組織の管理術:デキる部下を見極めよ
- 組織の人間を類型化すると4つにわかれ、基準は「能力」と「意欲」
❶能力があり、やる気のある部下
❷能力はあるが、やる気のない部下
❸能力がなく、やる気もない部下
❹能力はないが、やる気のある部下 - ❶は最も望ましく、周囲からの嫉妬などから守る必要あり
- ❷は「休まず、遅れず、働きすぎず」、1番になれる場所をつくる
- ❸は重要な仕事から遠ざけ、面倒な事態を引き起こさないようにする(配置だけ)
- ❹は最も厄介、根拠のない自信や無駄なやる気により、引き起こしたトラブルを始末するのは実に面倒
このタイプは能力が低くてもやる気があるので、組織を辞めようとしない - ❸と❹の評価について
やる気でカバーできる能力の領域は、極めて限られた範囲。
客観的な知識や経験と実力に裏付けられていない、独創的な発想で、❹が起こすトラブルを処理することのほうが、はるかにエネルギーがかかる。
第5章:組織の防衛術:問題人間からは遠ざかる
- 中間管理色がその職をまっとうするための要諦は危機を回避すること
- チーム運営でも一つだけ、能力の低い人間や、性格に欠陥がある人間をチームに絶対に加えないこと
- 組織の仕事は「足し算」ではなく「掛け算」、一人でも「0」がいると全体の結果がゼロ
- 「性格に欠陥がある」人間=最も危険なのは「嘘をつく人間」
第6章:組織の処世術:人間関係はキレイに泳げ
- 人間は環境順応性の高い生き物、知らず知らずのうちに組織は個人を支配す、組織の論理に従ってしまう
- 社内の付き合いを疎かにせず「付き合いの悪い人だ」とならないようにする
- 毎日のランチでの愚痴などのネガティブな場・コミュニティからは極力逃げる
第7章:組織の戦闘術:ヤバい仕事からうまく逃げろ
- 上司や組織を信用すると危ない
- 危機に直面した時に幹部の素顔が見える、容赦無く下の人間をリスクに晒す
- やばい話は「聞かないでおく」が協力が防御力
人間にはその立場や能力によってできることにも限界はある。自分の力で対処出来合い以上、闇雲に関わるのは、自らの首を絞めるだけでなく、周囲にも迷惑がかかる - 面倒ごとは「逃げる」「上を巻き込んで自分で判断しない」「断らせるよう仕向ける」は通常のリスクで機能する
第8章:組織の外交術:斜め上の応援団を作れ
- 人間として生き残ることが問題とないような危機に直面した場合に対して、最も重要なのは、自分が所属する組織の外に、リスクを負ってくれる友人を作ること
おわりに
- 最近の組織を見ていて不安になるのは、自己愛を十分に制御できない人が増えていること
- 自己愛が過剰な人は、自分の能力がある分野において劣っているということをどうしても認められない
- 自己愛が肥大しすぎて、他人の気持ちになって考えることが極度にできなくなっている
- こういう人は嫉妬心にも鈍感
- 結果として「現実が自分を飲み込むか、自分が現実を取り込むか」という危うい賭けを、自覚しないうちにし始める
- こういう人は大成功するか、人間関係で孤立して社会の片隅に追いやられるかのいずれかである